入試全体が現在どのような状況にあるのか
来年入試はどうなっていくのか、を見ていく前に、入試全体が現在どのような状況にあるのかを知ることが大切です。
18歳人口の推移と入試状況を見ると、皆さんと同じ現役受験生がどれぐらいいるのかがわかります。もちろん、18歳の人、全員が大学・短大を受験するわけではありません。最初から就職する人もいれば、専門学校に進学する人、フリーターになる人なども含まれています。この人たちは受験しませんから、来年入試の受験生数は浪人生とあわせて約78万人に減少すると思われます。
入りやすい入試状況の理由
受験生数がもっとも多かったのは13年前の1992年入試で、約121万人でした。この時、18歳人口もピークで、以後、減り続け、同様に受験生数も減少し続けています。
受験生数はこの13年で64%程度に減少しましたが、大学・短大の入学者数は約81万人から、昨年は約70万人にまで減ったとはいえ、減少率は13.6%にとどまっています。
つまり、受験生は全体の36%減ったのに、入学者は14%しか減っていない、だから、入りやすい入試状況になっているわけです。入学者も志願者と同じ36%減っていれば、受験人口ピーク時と同じく厳しい入試状況になります。
どうして入学者は減らないのでしょうか。実はこの13年で、大学数が激増しているのです。文部科学省の統計によりますと、13年前の1992年の大学数は523校、短大は591校の計1,114校でしたが、昨年は大学709校、短大508校の計1,217校で、103校増えています。特に大学に限れば、186校、35.6%も増加しています。
18歳人口は来年以降も減少していき、当初、2009年と予測されていた“大学・短大全入時代が前倒しになり、2007年に到来すると予測されています。最近の大学・短大への入学者数は、予測された入学者より多いためです。
なぜ大学・短大は次々と新設されるのか
このように大学・短大にとって厳しい状況が待っていますが、それなのになぜ、大学・短大は次々と新設されているのでしょうか。
その理由のひとつは世の中の進歩の速度が早く、社会で必要とされる人材に求められるものが、高度化、多様化したことがあげられます。例えば、看護師養成は、以前は短大や専門学校が中心でした。しかし、最近では看護大や医科大の学部・学科などに数多く新設されています。
医療が急速に進歩し、学ぶ内容が増えたため、4年かけて学ばないと追いつかないのが理由です。これは看護の分野だけではありません。ITなど社会の進歩にあわせて新しい分野が生まれ、それを学べる学部・学科が増えてきているのです。
また別の理由もあります。志願者減少が著しいのは、大学より短大です。大学志願者が10年前と比べて8割程度なのに対して、短大志願者は半分以下に減っています。女子の高学歴志向が強まり、それにあわせて短大を改組して大学や学部を新設する、あるいは短大の一部の学科を大学・学科に転換するということが行われました。
このような理由から、受験生が減るとわかっていても、新しい大学・学部が毎年、多数設置されているわけです。
もちろん、短大でも受験生のニーズに応え、学科改組、カリキュラムの改革が行われ、「早く社会に出て働きたい」と考える目的意識の高い受験生に人気があります。
こういった動向に対し、全国300高校の進路指導の先生方は、どう考えているのでしょうか。
「学部・学科の改組・増設の改革についてどう思いますか」の問いに対して、「内容のよくわからない学部・学科が増えている」72.3%、「名前だけが新しく、内容は既存学部・学科と変わらないような気がする」52.2%という厳しい意見が過半数を超えています。大学の新学部・学科の内容がそれほど浸透していない影響もあると思われます。
このような状況の中、私立大入試はどうなっていくと予測されるのでしょうか。
センター試験の影響
昨年、私立大一般入試全体の延べ志願者数は、2,629,845人、前年比3.9%減、4年ぶりの減少となりました。国立大4.5%減、公立大9.0%減と、すべて減少となっています。昨年から始まった国立大センター試験原則5教科7科目化を敬遠して、一昨年中に合格を決めた受験生が多かった影響と見られます。
私立大のセンター試験利用入試の志願者減
私立大の志願者減ですが、理由はいくつか考えられます。その一つがセンター試験利用入試で、思ったほど志願者が増えなかったことです。私立大のセンター試験利用入試は、ほとんどの場合、センター試験の成績だけで合否が決まるため、手軽で利用しやすいことから受験生に人気で、さらに、受験料が一般入試より安く、平均でもおよそ17,000円で、一般入試の35,000円の半額程度になっていることも人気の理由です。
ただ、センター試験利用入試は募集人員が少なく、人気大学の場合、一般入試より高倍率になるケースもみられ、簡単に出願できる反面、合否が読みにくく、合格最低点も高いことから、利用しづらい面もあります。
昨年は人気大学の新しい参加が少なかったことと、国立大のセンター試験原則5教科7科目化により、以前なら私立大志望者もセンター試験を受け、私立大のセンター試験利用入試に出願し、さらに国公立大の私大型入試科目のところに出願していましたが、私大型入試を行う国公立大がほとんどなくなり、私大志望者がセンター試験を有効に活用しなかったと見られます。
来年は現在のところ、23大学が新たに増え、参加校は430大学になります。さらに、青山学院大・経済・経営、明治大・商、明治学院大・経済―経済、立教大・理など4大学が、学部を増やして、センター利用入試を実施します。
進む大学の二極化
今年の入試では、今までレベルに関係なく私立大全体で志願者が増加していたのに対して、上位校の人気が高く、中堅から下位に向けて、志願者減少が徐々に目立つ、大学の二極化が進みました。
私立大は2007年の大学全入時代に向かって、「競争が残る大学」と「全入の大学」とに分かれていくと思われます。これが“大学の二極化”です。
二極化の分かれ目は難易度55前後
この二極化の分かれ目は難易度で言えば、どれぐらいになるのでしょうか。この問いに対する回答では「55前後」がもっとも多く49.4%、次が「50前後」29.2%で、合計すると8割近い先生が、50〜55前後と予測しています。
2006 君はどの大学を選ぶべきか<内容案内編>(大学通信発行)より
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